「医療ツーリズム」を経済成長の貢献につなげることができるか

治療や健診を目的に訪れる外国人観光客を医療機関で受け入れる「医療ツーリズム」は経済成長への貢献が見込まれるとして、シンガポールや韓国などでは国家プロジェクトとして推進されています。日本でも政府が閣議決定した「新成長戦略」において、2020年までに高度医療と健診分野でアジアトップ水準の地位を獲得することを目標として、本格的な受け入れ開始準備に取り掛かりました。

日本政策投資銀行が試算したデータによると、2020年における国内の医療ツーリズムの潜在需要は43万人、市場規模では5,500億円となっています。収益の増加を見込む病院や地域活性化の足がかりにしたい地方自治体からの期待は大きく、官民一体となって外国人患者を受け入れる動きが全国的に広がっています。既に一部の大手旅行代理店は医療ツーリズムに特化した部署を新設し、医療機関との提携を開始しています。

医療ツーリズムの後押しとして、政府は2011年1月に医療目的で来日する外国人を対象に「医療滞在ビザ」の発給を開始しました。1回の来日で最大6ヶ月間の滞在が認められ、3年間の有効期限内であれば何度でも出入国ができるなど、従来のビザに比べて大幅な規制緩和を行いました。

外国人患者を受け入れるに当たって最大の障壁となる言語面については、経済産業省が東京都内の大学に委託する形で医療専門の通訳の養成をスタートしました。厚生労働省も生活文化の違いに対応できる医療機関を認証する制度の創設を目指しています。また、観光庁も外国人患者と医療機関の間で橋渡しを行うコーディネーターの機能強化に向けた施策を行う予定です。

さらに経済産業省では、外国人患者の受け入れに積極的な医療機関のネットワークの充実を図ります。提供する医療サービスの内容や患者の情報を共有することで、様々なニーズに対応できる体制作りを目指します。あわせて外国人患者の受け入れの調整や斡旋を担う支援組織も設立する予定です。

その一方で、日本医師会を中心とする医療関係者の間では、「国内の患者の診療に影響が出る」「混合診療の全面解禁に繋がる恐れがある」との懸念から、反対意見も根強くあります。さらに経済産業省の実施したアンケートでは医療ツーリズムに関する認知度が低く、外国人のマナーや待ち時間の長さなどに関する不安も多く聞かれる結果となりました。